カメラがない時代はどうしてた?思い出を残す方法の移り変わりの歴史
写真を撮る大きな理由のひとつは、「大切な瞬間を残したいから」ではないでしょうか。100年以上前から、人々は見たものや感じたものをカタチにすることに力を注いできました。カメラと記録の歴史を簡単に振り返ります。
カメラがない時代の思い出の残し方は?カメラ誕生からフィルムカメラまで
カメラのなかった時代、人は何かを記録するのに、画家が描き“写す”という手法をとっていました。かなり古い話になりますが、少しだけカメラのはじまりの歴史を振り返ってみたいと思います。
「ピンホール現象」という言葉をご存じでしょうか。暗い部屋で、壁の小さな穴から光が入って反対側の壁に届くと、外の景色が逆さになって見える現象のことです。この現象自体はすでに紀元前には発見されていたようです。16世紀になると、このピンホール現象を利用した「カメラ・オブスクーラ」(写真鏡)というものが考案されました。風景を投影して観察したり、絵に描いたりするための装置で、カメラの原点といわれるものです。
世界で初めて撮影に成功したのは、1826年のフランスでした。このとき感光材料(光を記録する媒体)にはアスファルトが使われていたといいます。その後1839年には、感光材料に銀を使った写真術「銀板写真(ダゲレオタイプ)」が誕生。ちなみに残っている当時の写真はポートレート(肖像写真)が多く、写真はおもに人物を撮るのに使われていたようです。
日本には江戸時代の1848年に銀板写真が伝わり、幕末には写真館もできました。この時代に撮られた坂本龍馬の写真は教科書でも目にしますね。カメラといえばフィルムカメラ、という時代はここから100年以上続きます。
フィルムカメラの場合、デジタルカメラと違って、撮影後はネガフィルムを写真店でプリントしてもらわなければ何を撮ったかわかりません。そのため、フィルム時代は写真はカタチにするのが当たり前で、プリント写真はアルバムに入れて保管するのが一般的でした。
*レンズ付きフィルム「写ルンです」
フィルム時代の世界的ヒットといえば、1986年に発売されたレンズ付きフィルム「写ルンです」。実はここ数年、若者を中心にリバイバルヒット中。銀塩フィルム写真の持つ独特の風合いに、多くの人が魅力を感じているようです。
デジタルカメラやスマ-トフォンの台頭、デジタル写真の時代へ
2000年代に入るとコンパクトデジタルカメラが台頭し始めましたが、実は一般向けデジタルカメラを世界で初めて開発したのは富士フイルムです。1988年にドイツのフォトキナという展示会で、「FUJIX DS-1P」という名称で発表しました。デジタルカメラは、その後2000年代に入ると徐々に普及していきます。
2008年にiPhoneが日本に上陸し、このころからスマートフォンも徐々に広まっていきました。写真も撮るのも、フィルムカメラからデジタルカメラやスマホのカメラへと変化。デジタル写真はモニターで見るだけという人や家庭のインクジェットプリンターでプリントするという人も増えました。また、フォトブックやカレンダーなど、アルバム以外の思い出の残し方も登場し、思い出を残す方法は多様化しています。
動画における思い出の残し方の移り変わり
写真だけでなく、動画も思い出を残すカタチとしてポピュラーです。1975年にはソニーのベータ方式、1976年には日本ビクターのVHS方式のビデオテープレコーダーが登場。ビデオカメラは1980年代から一般家庭にも普及していきました。現在はビデオカメラ内蔵のハードディスクやSDカード、DVDなどへと記録媒体が変化しています。また、デジタルカメラやスマホで動画撮影をする人も増えています。ちなみに、「古いビデオデッキを捨ててしまってビデオテープが見られない」という人もいるかもしれませんが、最近はVHSや8mmをDVDに変換するサービスもあります。
思い出の残し方はこれからますます多様化していくことが予想されます。それでも「大切な瞬間をカタチにしたい」というシンプルな思いは、はるか昔から変わっていないのではないでしょうか。